応召義務について
誰でもいつでも診なくてはいけない?
獣医師の先生方は、「苦しむ動物たちを助けねばならない」という使命感や、応召義務違反になることへの恐れから、飼主さんからの無理な要求を拒めず苦慮する場合が多々あります。
確かに、獣医師には応召義務がありますが、義務が認められないケースもあります。
そもそも、応召義務とは、「診療を業務とする獣医師は、診療を求められたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。(獣医師法第19条第1項)」と定められたものです。
ですから、正当な事由があれば、拒否をしてよいことになります。
ペットを連れずに薬だけ欲しい飼主さん
一つ例をあげますと、飼主さんが、ペットを連れずに来院し、ペットの具合が悪いから薬を処方して欲しいと求めました。ルールがあるから処方はできないと説明しても納得せず、長時間の対応を余儀なくされ、ご不満を持ったまま帰ってしまいました。
このような要求は、しばしば起こる事例です。
勿論、無診察処方は違反にあたりますから、処方は許されませんが、わざわざ来院した飼主さんを無下に帰らせてしまっても良いのだろうか?と悩まれる先生方もいらっしゃることでしょう。
このような事態への対応のポイントは、応じられない要求はしっかりと断り、その理由を納得してもらう点です。
具体的には、無診察処方の要求に対しては、単に、「ルールだからできない」と説明するだけでは足りず、「ルールがあるので、ペットを診察しない限り、当医院では処方はしません」というように、断るだけではなくなぜ診察をせずに薬を処方出来ないかについて、大切なペットの安全のためであることを説明して納得してもらいましょう。
もし、ご自身で対応可能と判断できる場合は、「次回、ペットを連れて来てください」と言い添えればよいでしょう。
遠慮がちな対応は、強く言えば要求が通るかもしれないと期待させ、返ってクレームを長引かせます。クレーム対応に長時間の時間を割くとなると、他の業務に支障が出ます。そのような事態を防止するためにも、毅然とした対応を心がけるのが重要です。